桜花狂咲

藍色(あいいろ)の闇が追(せま)り
名殘惜(なごりお)しそうな夕焼(ゆうや)けは
ゆっくりと消えてゆく
重だげな雨雲(あまぐも)が唸(うな)り
遠くに響いた春雷(しゅんらい)が
静寂(せいじゃく)に木霊(こだま)した
冷えた身体を寄せてみても
嗅(か)ぎ慣れた愛しい匂いは
土埃(つちぼこり)が奪って

じっと黙っている貴女(あなた)と
不安で重ねた唇は
冷たく渴いていた
重なる影 抱き寄せる手が震え
落ちる雫 殺せぬ嗚咽(おえつ)が漏れる
咲いては散り 散ってまた咲く
桜のように
もう一度、お会いしましょう
因果(いんが)と絡んだ深紅(あか)い雫
散っては咲き 咲いてまた散る
桜のように

もう一度、お会いしましょう
望むことさえも禁忌(きんき)ならば
さあ 門出(かどで)祝えや
散りゆく桜

自由を失った身体は
君を探すには重すぎて
棄(す)ててしまいたいのに
もう一度微笑んでほしくて
そのための永遠が欲しくて
この命を捧げた

歪(ひず)む意識 懐中時計(かいちゅうどけい)は止まり
醒めぬ悪夢(あくむ)  虚(うつ)ろに彷徨(さまよ)い歩く
咲いては散り 散ってまた咲く
桜のように

もう一度、お会いしましょう
廻り廻り来る春と共に
散っては咲き 咲いてまた散る
桜のように

もう一度、お会いしましょう
僕が君なのだと解(わか)る限り
さあ この血啜(すす)れや 数多(あまた)の蕾(つぼみ)
もう一度、お会いしましょう
咲いては散り、散ってまた咲く
桜のように

もう一度、お会いしましょう
どのような姿に変わろうとも
散っては咲き、咲いてまた散る
桜のように

もう一度、お会いしましょう
どれ程(ほど)歪(ひず)んでいたとしても
さあー
咲いては散り 散ってまた咲く
桜のように

もう一度、お会いしましょう
私が貴方だと解る限り
さあ 契(ちぎ)り祝えや 満開の桜

散っては咲き 咲いてまた散る
桜のように…

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